生活保護基準の引き下げ方針に対する緊急声明
生活保護基準の引き下げ方針に対する緊急声明
ホームレス総合相談ネットワーク
事務局長 高 田 一 宏
私たちホームレス総合相談ネットワークは、ホームレス状態にある方たちへの法的支援を行うために、2003年2月に結成されたグループです。メンバーは、弁護士、司法書士、その他専門家、ホームレス問題の支援者などです。
平成29年12月14日開催された社会保障審議会生活保護基準部会(以下「基準部会」)により社会保障審議会生活保護基準部会報告書(以下「報告書」)がとりまとめられたことを受け、緊急に声明を発します。
今でさえ低きに過ぎる、生活保護基準がこれ以上下がることに断固反対します。
その理由は、次のとおりです。
私たちが日常に支援するホームレス状態の人びとは、住居を失い衣食を欠く、絶対的貧困状態にあります。
確かに、ホームレス状態の人の生活実態は、比較対象である一般低所得層たる全国消費実態調査からも除外されていますが、絶対的貧困にもかかわらず、生活保護制度を利用できない/しない、理由を検証する必要があります。
理由の一つには、いわゆる水際作戦と言われる、保護を開始しない/保護は開始するが劣悪施設に収容する、という違法・不当な運用にありますが、特に、注視すべきは、ホームレスであった者もひとたび保護を受ければ、通常の被保護者・低所得者であるものかかわらず、ホームレスであった者として扱われ、劣悪施設に長期にわたり収容される差別(スティグマ)が続くことにあります。
そして、スティグマの存在は、決してホームレス特有の問題ではなことは、国連社会権規約委員会から、2013年5月最終見解として、「スティグマが高齢者に公的な福祉的給付の申請を思いとどまらせていること」に懸念を示された上で、「公的な福祉的給付に付随したスティグマをなくす観点から国民を教育すること」を勧告されていることからも明らかです。
スティグマの解消という国の責任を果たせていない現状において、単純に第1十分位(低所得者)との比較により、検証すれば、際限なく基準額は下がります。国は、少なからず生活保護が尊厳との引換給付となっている現状を直ちに解消すべきであり、無差別平等に保護が受けられる法の原理を徹底させることにこそ力を注ぐべきです。
以上
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