明治公園で行われた事実上の強制立ち退きに対する質問書
当ネットワークのメンバーが中心となった、宮下公園国賠訴訟弁護団が、平成28年1月27日未明に明治公園で行われた事実上の強制立ち退きについて、強制立ち退きを実施したJSCに対して、強制立ち退きの法的根拠等について質問をしました。
ご連絡(質問書)
独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC) 御中
理事長 大東 和美 殿
新国立競技場設置本部 ご担当者 殿
ファクス(JSC管理部総務課)
2016年1月29日
弁護士 山本 志都(連絡担当)
墨東法律事務所
〒 136-0071 江東区亀戸2-28-3 アセッツ亀戸4階
弁護士 戸舘 圭之
戸舘圭之法律事務所
〒 102-0083 千代田区麹町2-12-13 LYNX麹町7階
初めてご連絡します。
私たちは、2010年9月渋谷区立宮下公園で行われた野宿生活者らの排除に関して、同公園内に居住していた野宿者及び同公園を活動場所としていた複数の団体を原告とし、渋谷区を被告とする国家賠償請求訴訟事件の原告代理人を務めていた弁護士です。上記事件については、2015年3月13日、東京地裁において、公園の全面封鎖が行われた当日、野宿者が渋谷区の職員らが有形力を行使して排除したことについて違法性を認め、公園のネーミングライツ契約などについても地方自治法上の違法性があるなどとする内容の原告勝訴判決があり、同年9月17日、東京高裁は被告渋谷区の控訴を棄却し、地裁判決が確定しています。
1月27日早朝、貴法人の職員らが、多くの警備員を引き連れて、明治公園の3ヶ所の出入り口の封鎖を強行し、貴法人から委託を受けたと思われる業者が、封鎖のための工事、さらに、霞岳広場にある公衆便所および園内の水道と電気を止める作業を行いました。
明治公園内には数名の野宿生活者が暮らしています。貴法人は、これまでこれらの公園住人に「住んでいる人がいる間は工事をしない」「生活に影響のある工事について事前に説明をする」「話し合いで解決する」と約束してきたと聞いています。しかし、貴法人が委託した業者によって行われた工事は、野宿者の居住区と公衆便所を行き来する通路に、クレーン車で単管を組んだ鉄柵を吊り下げて、工事の強行に反対し話合いを求める住人らと応援有志の頭上をかすめるように設置しようとするなど、きわめて危険なものでした。また、ライフラインの切断は住人らの生死と直結する問題ですが、事前の説明はありませんでした。貴法人の約束は全く反故にされています。
貴法人が、野宿生活者との話し合いを行わずに、その意思に反して強制退去を行うことは、きわめて重大な人権侵害です。明治公園に暮らす住人たちは、2013年の「東京オリンピック」決定以降、新国立競技場関連工事を理由に、東京都によって、二度の園内移転をしいられてきました。通路の封鎖、ライフラインの切断は、これら野宿生活者を実質的に強制排除するものであり、決して許されません。
新国立競技場計画そのものがいったん白紙撤回され、着工時期が来年1月に変更になっています。また、同計画をめぐっては前案の盗用疑惑が発覚して、再度の計画変更もありうると報じられています。野宿生活者の居住している明治公園の取壊し工事を、新国立競技場建設に先行して行う必要は全くなく、話し合いを行う時間も十分にあるはずです。
前述した宮下公園をめぐる判決内容にてらし、工事実施を理由にして野宿生活者を強制力により排除することは違法です。今後、貴法人あるいは貴法人が委託した業者が決してそのような行為を行わないよう、強く求めます。
また、野宿生活者らから昨日申し入れのあった、①話し合いの再開、②話し合いによる解決がなされるまでの明治公園取り壊し工事の停止、③通行禁止、公衆便所の水道や電気の停止などの措置の即刻停止 ④27日に設置した工作物の即時撤去 について、貴法人が責任をもって検討し、受け入れるよう、要請します。
なお、本件工事の強行、野宿生活者を実質的に排除したことについては、その法的根拠をめぐっても大きな疑義があります。法的根拠に関連する以下の諸点について、3日以内に書面で回答をいただけますようお願いします。
(1)貴法人は、野宿生活者が居住する明治公園内の土地について、いかなる法的権利を有しているのでしょうか。根拠もあわせてお示しください。
(2)1月27日に行われた出入り口の封鎖や公衆便所の水道や電気を止める措置は、東京都の指示によるものですか、それとも貴法人の判断で行われたものですか。東京都の指示によるものであれば、担当部署をお教えください。貴法人の判断で行われたものであれば、そのような措置を行うのは、貴法人の有するいかなる権限に基づくものなのかご説明ください。
(3)1月27日には、野宿生活者の友人や知人等の関係者の、出入り口からの排除が強制力を用いて行われましたが、これは貴法人の有するいかなる権限に基づくものですか。
(4)貴法人は、明治公園内の野宿生活者の存在を事前に認識していましたが、これらの野宿生活者に対して、今後、どのような対処を行っていくつもりなのか。東京都との間ではどのように連携をとっていくお考えですか。
(5)1月27日の工事は「明治公園橋等とりこわし工事」あるいは「下水道撤去工事」どちらに含まれるものでしょうか。あるいは、それとは別の工事に含まれるものなのでしょうか。
(6)貴法人が行うことを予定している、明治公園内の野宿生活者に影響を与えることが想定される工事、具体的には「明治公園橋等とりこわし工事」「下水道撤去工事」あるいはその関連工事について、委託業者名、契約締結日、工事期間、工事内容をそれぞれお示しください。2015年12月21日には、貴法人担当者は「委託業者を交えて改めて工事説明会を行う」旨説明していたようですが、工事説明会は、いつ行う予定ですか。
ご対応、よろしくお願いいたします。
以上