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生活保護法第78条徴収処分に関する要望書

ホームレス総合相談ネットワークが中心となる千葉市78条徴収処分取消訴訟弁護団(団長:中川素充)は、厚生労働省に対して、千葉市が違法処分を認めたうえで、自庁取消したことにより終結した裁判に関連して、「生活保護法第78条第1項に基づく費用徴収処分をするに際し、その要件である『不実な申請その他不正な手段』の事実認定につき確実を期すること」などの要望書を提出しました。




要 望 書

 

2014年7月4日

厚生労働省社会・援護局保護課長 大西 証史 様

千葉市78条徴収処分取消訴訟弁護団

団  長 弁護士 中川 素充

事務局長 弁護士 内田  明

(連絡先)            

東京都新宿区四谷3丁目2番2号

TRビル7階

マザーシップ法律事務所

(担当 弁護士 内田 明)

電 話 03−5367−5142

FAX 03−5367−3742

 

第1 要望の趣旨

 1 地方自治法第245条の9第1項及び第3項の処理基準として、都道府県及び市町村に対し、以下の内容について実施を義務付け、周知徹底すること

  (1) 生活保護法第78条第1項に基づく費用徴収処分をするに際し、その要件である「不実な申請その他不正な手段」の事実認定につき確実を期すること

    (2) 同項に基づく費用徴収処分をするに際し、可能な限り対象者に対して弁明をする機会を付与して、手続に慎重を期すること

  (3)同項に基づく費用徴収処分の対象者について、条文上「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者」(同法第78条)に限定されており、世帯単位の原則(生活保護法第10条)が適用されないことを周知徹底させること、

 2 「不実な申請その他不正な手段」の誤った事実認定によって、同項に基づく費用徴収処分が違法不当になされていないか、かつ手続に慎重を期しているかについて、同法第23条第1項の事務監査の重点事項とすること

 

第2 要望の理由

 1 当弁護団は、千葉市による被保護者に対する生活保護法(以下「法」といいます。)第78条に基づく費用徴収処分(以下「本件処分」といいます。)について取消訴訟(以下「本件訴訟」といいます。)を提起した弁護団です。

   千葉市は、原告世帯に対して、支給した転居費用が支給目的に沿って消費されなかったとして本件処分をしましたが、実際には転居が行われており、また不正の意図もありませんでした。

   そのため、なんら処分理由がないにもかかわらず、障害のある家族に対して「不正受給」処分というあまりにひどい処分がなされたと判断して、平成26年5月26日に千葉地方裁判所に提訴しました(平成26年(行ウ)第23号)。

   訴状を受け取った被告千葉市は、第1回口頭弁論期日の前に、自らの違法を認め、「法第78条の規定は、「不実な申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた」ことが法律要件とされており、受給者に不正受給の意図があったことが必要とされています。/本件では、不正受給の意図が認められず、また実際に転居を実行していることから、同条に定める要件を欠くため、本件処分を取り消すことといたします。」との理由で、本件処分の自庁取消をしました。

 2 法第78条の処分において、本件処分のように「同条に定める要件を欠」いた処分が多数なされていることは想像に難くありません。

   御庁は、不正受給対策として課税調査を実施していますが、機械的に不正受給とする事例もみられ、取消認容裁決も存在します(宮城県知事平成26年4月23日裁決)。法律家が関与することで被保護者への違法行為に対して一定の援助がなされますが、法律家へのアクセスも費用弁償も不十分な状況からして、御庁が果たすべき役割は極めて重要です。

 3 また、本件処分において、被告千葉市は、世帯単位の原則(法第10条)を根拠に、実際に転居費用を費消した者だけではなく、世帯全体に対し、法第78条に基づく費用返還義務を負わせました。しかしながら、法第78条は「その者から徴収することができる。」と定めて対象者を限定しており、法第63条のように「被保護者が・・・返還しなければならない。」と定めていないので、法第78条に世帯単位の原則が適用されないと解すべきです。

 4 さらに、生活保護法の一部を改正する法律(平成25年12月13日法律第104号)に基づく改正法第78条及び第78条の2によって、徴収金の加算、滞納処分の例による徴収、保護金品による充当が新設されています。これらの規定は、平成26年7月1日に施行されました。

   上記のとおり法第78条が実態面において厳しいものとなったにもかかわらず、その手続規定は改正されず、慎重を期したものとなっておりません。

   まったく寝耳に水の「不正受給」呼ばわりが許容されるべきではありません。通常は、対象者から言い分を聞き取ることは最も事実認定を確実にするものです。そのためには、事実上、可能な限り、対象者に対して弁明の機会を付与すべきです。いわゆる「不正受給」呼ばわりは、行政手続法第13条第2項第4号に規定する「納付すべき金銭の額を確定」する不利益処分として手続を簡素にすることが許容されるものではないというべきです。

 5 よって、当弁護団は、都道府県及び市町村において法第78条が適正に運用されるように、御庁に対し、要望の趣旨記載のとおり、処理基準による義務付け、周知徹底、及び事務監査を求めます。

以上

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