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第33回 全国クレジット・サラ金・ヤミ金被害者交流集会in仙台

第33回 全国クレジット・サラ金・ヤミ金被害者交流集会in仙台
第9分科会では、山川幸生弁護士が報告しました。
「強制退去問題と国際人権」

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★東京で連続して行われている強制退去問題について,そして,当該問題と国際人権法との関係についての報告。

■東京では,宮下公園,荒川河川敷,竪川,渋谷同時排除(渋谷区地下駐車場,美竹公園,トイレ),戸山公園,江戸川区高速高架下,堀切菖蒲園高架下など,ここ数年の間にたて続けに強制退去が行われている。
■竪川では,行政代執行が行われた。
■渋谷では,事前の相談や生活保護への誘導等の支援はなく,抜き打ち的に3カ所同時に排除が始まった。しかも,渋谷区地下駐車場や美竹公園では,長年にわたって,支援団体による支援の場所でもあった。法律相談も行われていた。支援団体への事前の相談や通告もなかった。のじれんの倉庫は代執行された。
■戸山公園では,排除の動きがあるとの情報を得て,事前に申し入れを行ったところ,都は,行政代執行等の強制的なことはしないとのことであったし,実際,穏当であったが,ただ,しっかりと相談に乗り,生活保護への誘導等が行われたかというとそうではなかった。
■江戸川区高架下では,「指導」により,出て行ってもらうという形で進められたが,その中に,認知症でいろいろな疾患がある方を,同様に出て行かせた。この方は,認知症のために,出て行かされたこと自体を忘れ,元の場所に戻ろうとしたところ,フェンスで閉め切られていて,その場所で倒れてしまい,保護された。行政文書の開示請求を行い調査をしたが,生活保護の説明や誘導等の文言はまったく見つからなかった。
■これら以外にも,我々が気がつかないうちに,粛々と行われた排除もあるのであろう。東京スカイツリー建築時に周囲の方々が「指導」により,排除されたと聞き及んでいる。
■行政代執行により「人」の排除が行われているが,そもそも,行政代執行は「もの」の排除はできても,「人」の排除はできない。本来であれば民事訴訟,民事執行によるべきであろう。経産省前のテントについては,民事訴訟がとられている。社会権規約委員会からの強制退去に関する問いに対する日本政府の回答は,民事保全法・執行法のことを取り上げている。政府もそのことを本当は分かっているはずである。
■「庁舎管理権」に基づいての排除もある。
■上記の強制退去に対して,裁判や仮処分を求めているが,裁判所は国際社会権規約に具体的な権利性を認めないことで一貫している
■不法占拠している人の「居住の権利」を守るような法制は国内法にはなし。あえていえば,憲法22条(居住の自由)。同条は,これまで経済的自由権として扱われてきた。最近になってやっと,人格権としての側面もあるのではないかとの議論が始まっている程度
■「国際人権規約(社会権規約)」について
 1)2条1項に,「漸進的」にすすめればいい,「利用可能な手段を」利用すればいい,とある
  →そのため,日本の裁判所は,権利性を認めない
   =塩見訴訟(平成元年)
 2)しかし,社会権規約には「すぐに実現できるもの」もあるのであって,権利性を認めてよいのではないかとの議論も出てきている。
   →自動執行性,執行規範性を認めるべきではないか!?
 3)社会権規約11条「居住の権利」
■社会権規約委員会の一般的意見第4(1991)「十分な住居に対する権利」
=「居住権」「立退をさせられない権利
■社会権規約委員会の一般的意見第7(1997)「十分な住居に対する権利」
■社会権規約委員会の一般的意見第9(1998)「十分な住居に対する権利」
■こうした状態に対して,社会権規約委員会は「懸念」を表明している。「裁判官,検察官,弁護士に対して教育及び研修」をしろとも言っている!
→日本政府は「規約の規定の直接適用性に関する我が国の立場は審査に際して説明したとおりである」と回答し,実質的に無視した。
■社会権規約から見た立ち退き問題への正しい対処法
=まず,住居の確保であるが,我が国の現状において,生活保護以外にないであろう。さらに,食糧の確保,健康の保持,人格の対処
=しかし,上記で取り上げたほとんどのケースで,生活保護への正しい誘導は見られない。
■渋谷ホームレス同時排除における人権救済申立
=上記のような裁判所の状態では,まず,日弁連がちゃんとした意見を出す必要があると考え,人権救済申立を行っている。
■社会権規約とホームレス支援
=国内法制が不十分な現在,ホームレス支援において,社会権規約は重要。裁判所や行政に対して「国際的な法制から見たらこうだ」というものを出していく。
=気の長い話になるが,認識を持ってもらうための働きかけが必要
■今回の勧告では強制退去の問題は触れられなかった。私たちの力不足。国際NGO,国際社会に対しての働きかけが必要であろう。


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