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【意見書】目黒区で「生活保護の申請が認められなかったことに腹を立てた男が、刃物をもって暴れたという想定の下」行われた訓練に対して

目黒区が、「生活保護の申請が認められなかったことに腹を立てた男が、刃物をもって暴れたという想定の下」行った訓練に対して、以下のとおり意見しました。

PDFは→ http://goo.gl/7qiI5

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意見書

2012年12月15日

目黒区長青木英二 殿目黒区福祉事務所長 殿

ホームレス総合相談ネットワーク
代表 弁護士 森川文人
担当弁護士 戸舘圭之

私たちホームレス総合相談ネットワークは、主として東京都内においてホームレス状態にある人々をはじめとする生活困窮者に対する法的支援活動を行っている弁護士、司法書士、支援者らからなる団体ですが、本年12月7日、目黒区総合庁舎で行われた「受付窓口での不当な要求や暴力に対応する訓練」は、憲法25条、生活保護法に照らして重大な問題があることから以下のとおり意見させていただきます。
報道等によれば、2012年12月7日午後2時から午後4時までの間、目黒区総合庁舎において、「受付窓口での不当な要求や暴力に対応する訓練」が、目黒区青木英二区長や窓口業務などを担当するおよそ120人の職員が参加して実施され、生活保護の申請が認められなかったことに腹を立てた男が、刃物をもって暴れたという想定の下、職員らが連携して警察に通報し、駆けつけた警察官が取り押さえるとの内容の訓練が行われたとのことです。
しかし、目黒区におけるこのような訓練の実施は、以下のような重大な問題点があると指摘せざるを得ません。
プレスリリースによれば「生活保護の申請に来た来客者に対して、職員が申請書を確認したところ、要件に該当しなかったことから受理を拒んだところ、来客者は、受理されないことに腹を立て興奮状態となり、刃物を出して振り回すという想定」の下、「危機対応訓練」が実施されたとのことです。
しかし、生活保護法上、福祉事務所の職員に生活保護の申請の受理を拒む権限は与えられておりません。仮に申請書の記載から生活保護開始要件に該当しなかったとしても、それだけで「受理を拒」む理由にはなりません。生活保護の申請があった以上、調査をし決定しなければならない義務が処分行政庁にはあり、申請意思が明白に示されているにも関わらず申請書を受け取らないことは、申請権を侵害したものとして違法です。

生活保護法は、生活保護の申請があった場合には、資産等の要件を審査するための法定期間(原則14日間)を設け、福祉事務所長に対して調査義務を課しています。したがって、生活保護申請書の記載のみで、要件の該当性を判断をすること自体、調査義務を怠ったものであり、違法な取扱いといわざるを得ません。
申請権侵害に対しては、福祉事務所の窓口で「水際作戦」と称される違法な申請不受理が社会問題化しており、厚生労働省も、申請権を侵害することのないように周知徹底しているところです。
そもそも、生活保護制度は、憲法25条に基づき、全ての生活困窮者に対して健康で文化的な最低限度の生活を保障するための制度です。 窓口に訪れて生活保護を申請する人の多くは、さまざまな生活上の困難を抱えながら、やっとの思いで福祉事務所の窓口を訪れるのであり、社会福祉の専門的サービスの担い手である福祉事務所職員には、生活困窮者が適切に生活保護制度につながるよう親身になって援助する姿勢こそが求められています。

にもかかわらず、生活保護法に対する誤った理解の下、生活に困って助けを求めている来所者を不審者、危険人物と想定して「訓練」を行い、それを報道機関等を通じて社会に対して公表することは、生活に困窮している多くの人々を萎縮させ、生活保護申請を控えさせてしまう結果をもたらすものであり、到底容認できません。今回の、訓練実施は、生活保護を申請する区民を危険人物、不審者扱いすることにより、生活保護制度に対する誤解、偏見を助長するものといわざるを得ません。
区役所窓口での不当な要求、暴力への対策の必要性自体を否定するものではありませんが、訓練実施にあたっての「想定」の内容は、生活保護法の無理解に基づくものであるばかりでなく、生活保護制度に対する偏見を助長しかねないものであると考えます。

憲法25条、生活保護法に基づいて、生活保護制度を適法に運用すべき立場にある行政機関において、このような「訓練」が行われたことは誠に遺憾であり、憲法25条に基づく生活保護制度の適切な運用を求め活動してきた当ネットワークとしては、今回の訓練実施を到底見過ごすことはできません。当ネットワークは、目黒区の最高責任者である区長及び福祉事務所長に対し、今後、このような法の誤解に基づく活動が行われることのないよう、区長をはじめ全職員に対する憲法及び生活保護法の正確な知識の周知徹底を求めま
す。

以上

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