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新宿区ホームレス生活保護裁判(新宿七夕訴訟)新宿区の上告断念発表を受けての弁護団声明

2008年から争ってきました新宿区ホームレス生活保護裁判えすが、新宿区が上告断念を表明しました。
これで控訴審判決が確定します。

みなさま、ご協力本当にありがとうございました。

以下、新宿区ホームレス生活保護裁判(新宿七夕訴訟)新宿区の上告断念発表を受けての弁護団声明

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2012年7月24日

新宿区ホームレス生活保護裁判弁護団

東京高等裁判所第20民事部(春日通良裁判長)が、本年7月18日、原告勝訴の一審の判断を認め新宿区の控訴を棄却した新宿区ホームレス生活保護裁判(新宿七夕訴訟)で、新宿区は、ホームページ上で上告をしない旨を表明しました。

http://www.city.shinjuku.lg.jp/whatsnew/pub/2012/0724-02.html

新宿区は、「見解の相違はあるものの、現行法令を前提とした場合、本判決を受け入れざるを得ないとの結論に達したので、新宿区は東京高等裁判所の判断を尊重し、上訴しないこととします。
と上告断念の理由を公表しています。
新宿区が上告をしないことにより、原告勝訴の東京高等裁判所の判断が確定する見通しとなりました。
東京高等裁判所は、稼働能力活用要件について一審の判断をそのまま引用した上、本件生活保護申請却下処分が生活保護法4条1項の解釈適用を誤った違法な処分であると判断し、本件処分の取り消しと新宿区福祉事務所長に対して生活保護開始決定の義務付けを命じました。
一審東京地裁は、「法は不可能を強いることができない」という法格言を格調高く述べた上で、当時、ホームレス状態にあった原告の生活保護申請を却下した新宿区福祉事務所長の処分が違法であることを明快に示しました。

本件訴訟は、2008年7月7日に提訴して以降、4年以上にわたり裁判をすすめてきました。
原告は、他区で生活保護を受けながらも、自分と同じような人が出てほしくないとの思いから、原告として法廷に立ち続けました。
昨今の生活保護バッシングの中、訴訟を続けることで生活保護を受けていることが周りに知られてしまうことを恐れ、体調を崩しかけたこともありました。

生活保護制度自体に対する激しい逆風が吹き荒れる中、新宿区が司法判断を尊重し敢えて上告断念に踏み切った判断は、評価されるべきものです。しかし、全国では、生活に困窮している人が生活保護の申請に至らず、餓死や孤立死に至る例が相次いでいます。
私たち原告弁護団は、厚生労働省、都道府県、ならびに全国の福祉事務所が、このような原告の血のにじむような努力、裁判をするに至った思いを受け止め、国民の生存権の守り手として、適切に生活保護行政を行っていくことを願います。

以上

新宿区ホームレス生活保護裁判 
弁護団事務局長
弁護士 戸舘 圭之(第二東京弁護士会)

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【意見書】渋谷区による同時複数箇所ホームレス排除行為に関する意見書

PDFはこちら


渋谷区長 桑原敏武 殿

平成24年7月10日

東京都新宿区四谷1-7日本写真会館4F
マザーシップ司法書士法人内
ホームレス総合相談ネットワーク
代 表 弁護士 森  川  文  人
                    東京都北区赤羽2-62-3
                   担当司法書士  後  閑  一  博
                       電 話 03-3598-0444 
                       FAX 03-3598-0445
    
意 見 書

第1 抗議及び要請の趣旨
 1 ホームレス総合相談ネットワークは、渋谷区が平成24年6月11日になした美竹公園、渋谷区役所地下駐車場及び渋谷区役所前公衆トイレの封鎖及びこれに伴うホームレスの排除に強く抗議する。
 2 渋谷区は、直ちに上記の封鎖を解除するよう、強く要請する。
 3 渋谷区は、美竹公園におけるホームレスの方々のテント・荷物等に対する都市公園法第27条第1項第1号の除却命令を発令する方針を直ちに撤回し、その撤去を中止し、当事者ら及びその支援者らと十分に話し合いを行い、生活保護法に従った居宅保護の開始をすすめるよう、強く要請する。
 4 渋谷区は、ホームレスの方々が渋谷区役所地下駐車場及び区役所前公衆トイレを夜間の寝泊まりの場所とすることができる状態に戻した上で、当事者ら及びその支援者らと十分に話し合いを行い、生活保護法に従った居宅保護の開始をすすめるよう、強く要請する。
 5 渋谷区は、「渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合」が毎週土曜日に行っている炊き出しのために美竹公園を使用することができる状態に戻すよう、強く要請する。
 6 渋谷区は、「聖公会野宿者支援活動・渋谷」が毎週金曜日に行っている炊き出しのために渋谷区役所地下駐車場を使用することができる状態に戻すよう、強く要請する。
 7 渋谷区は、第2項ないし第6項の要請に対して、美竹公園における除却命令の発令の可否を決する前に、文書により、理由を付して回答されたい。

第2 抗議及び要請の理由
 1 当団体について
   ホームレス総合相談ネットワーク(以下ネットワーク)は、ホームレスの方への法的支援を行う目的で平成15年に結成された団体であり、東京都と特別区が取り組んでいる緊急一時保護センターや自立支援センターでの法律相談や路上でのホームレスの方への法律相談等を通してホームレスの方の自立への支援や人権の擁護に取り組んでおります。
 2 美竹公園の封鎖並びにホームレス及び支援団体の排除
  (1) 美竹公園(以下「公園」という。)には、10数軒のテント・小屋があり、野宿者が寝泊まりの場所としています。この中には、平成23年11月、東京都児童会館の工事を名目とする封鎖によって、寝場所を奪われ、公園に身を寄せている野宿者もいます。
    公園では、毎週土曜日、14年間にわたって支援ボランティア団体「渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合」(略称「のじれん」)が共同炊事(炊き出し)を行い、ホームレスの方々の支援を行っています。
    以上の事実は貴庁も御存知のことであり、ホームレスの方々の居住や「のじれん」の共同炊事(炊き出し)も事実上黙認してきました。
  (2) 渋谷区(以下「貴庁」という。)は、平成24年6月11日の早朝午前6時半ころ、公園に寝泊まりするホームレスの方々や「のじれん」に事前に告知することなく(文書ビラによる告知があったのは、封鎖4日後の6月15日である。)、突如として公園をフェンスで封鎖し、多数の警察官によって包囲し、ガードマンらを用いて公園への出入りを制限しました。貴庁は、災害時の一時集合場所の整備を封鎖の理由に挙げています。
    そして、公園に寝泊まりするホームレスの方々に対し、出入りは認めながらも、公園入口前に、公園に寝泊まりするホームレスの1人ひとりの顔写真を張り、その出入りをチェックし、荷物について質問する等し、1週間以内に所持品を持って公園から退去するよう促していました。
 さらに、渋谷区長は、平成24年6月20日、貴庁の庁舎の掲示場において、不利益処分の名宛人となるべき者を「氏名不詳」等とし、対象となる物件の大部分を個別に明示しないまま、都市公園法に基づいて公園内の物件の除却命令の前提となる弁明の機会の付与の手続きを行う旨の告示をしました。この時点で貴庁は公園内のホームレスの方々や「のじれん」に対して直接通知しませんでしたが、その後平成24年6月29日付けで公園内のホームレスの方々に通知書を手渡し、「のじれん」の事務所に対しても郵送で通知を行いました。
 貴庁が上記告示において明らかにした除却命令は、ホームレスの方々のテント・小屋・荷物等を公園から撤去するための行政代執行の前提となるものです。貴庁は、除却命令を発令した後に行政代執行へ向けた手続きへと進む可能性が高いものと考えられます。
(3) また、上記の公園封鎖によって、のじれんは、毎週土曜日の共同炊事(炊き出し)を行うことができなくなり、これにより、公園に住む者だけでなく、多くのホームレスの方々が以前のような配食を受けることができなくなりました。
3 渋谷区役所地下駐車場の封鎖並びにホームレス及び支援団体の排除
(1) 渋谷区役所地下駐車場(以下「駐車場」という。)は、長い間、ホームレスの方々が寝泊まりの場所としていていました。ホームレスの方々は、夜間にのみ入場し、早朝になると、段ボールを片付けて荷物を持って引き揚げるという暗黙のルールを守っており、一定の集団的秩序をもった寝泊まりの場所となっていました。
  駐車場は、ホームレスの方々のうち、テントを持たない方々にとって、雨露をしのげる貴重な寝場所であり、生活の最低限の基盤であったのです。
  平成24年6月11日の封鎖直前まで約30名のホームレスの方々が駐車場で寝泊まりをしていました。
  また、キリスト教系の支援ボランティア団体「聖公会野宿者支援活動・渋谷」(以下「聖公会」という。)は、8年ほど前から、毎週金曜日に駐車場で炊き出しを行っていました。そこには、毎週200人前後のホームレスの方々が集まって、ボランティアから配食やコーヒー等の配布を受け、一時の飢えをしのいでいました。
  こうした事実を貴庁は知っており、貴庁は、これまで、聖公会を交えた当事者との交渉の中で、ホームレスの方々の夜間の駐車場の使用を強制的に排除することはせず、事実上一時使用を黙認してきました。
(2) しかし、貴庁は、平成24年6月11日早朝、ホームレスの方々が上記ルールに従って駐車場を退出した後、ホームレスの当事者の方々や聖公会に対して何の事前の告知もなく、工事を名目に駐車場を封鎖し、昼夜を通じて人が出入りできないようにしました。
  このため、駐車場を寝泊まりの場所としていたホームレスの方々は、その日から突然寝場所を失い、寝場所を求めて路上や代々木公園などをあてもなく彷徨うことになりました。
(3) また、上記の駐車場封鎖によって、聖公会は、毎週金曜日の炊き出しを駐車場で行うことができなくなりました。これにより、聖公会は、駐車場前で配食するほかなくなり、飲み物の配布を取りやめざるをえなくなるなど、規模の縮小を余儀なくされ、多くのホームレスの方々がその影響を受けています。
4 区役所前公衆トイレの封鎖及びホームレス排除
 (1) 渋谷区役所前の公衆トイレ(以下「トイレ」という。)でも、数人のホームレスの方々が寝場所にしていました。
 (2) しかし、平成24年6月11日早朝、改修工事を名目にトイレは封鎖され、ホームレスの方々は追い出されました。
5 渋谷区議会での貴庁の曖昧な答弁
   なお、上記の3か所の封鎖は、渋谷区議会開会中に行われたため、公園を所管する都市環境委員会及び駐車場を所管する総務区民委員会でも、工事の目的や突然着工した理由について委員の議員から質問がありました。しかし、貴庁は、あいまいな答弁に終始しました。
6 貴庁の行為の違憲性・違法性
  貴庁の上記行為は、ホームレスを公園から強制的に立ち退かせるもので、下記のとおり違憲・違法であり、これらの行為の中止を強く要請します。
 (1) 目的の不法性
   貴庁による公園・駐車場・トイレの封鎖行為(以下「本件封鎖」という。)は、突然予告なしに同時にホームレスの方々が寝起きする3つの場所の封鎖を行ったことや区議会での曖昧な答弁等の経緯からみて、単に公園・駐車場・トイレの工事等のために行われたものではなく、ホームレスの方々を一掃しようとしたこと、すなわちホームレス排除自体が本件命令の目的であったといわざるをえません。貴庁が本件封鎖の理由として挙げている各工事は、この時期に緊急の必要性があるのか、極めて疑問なものばかりです。
   また、本件では、ホームレスだけでなく、その支援団体も同時に排除されています。これは、最低限度を下回る極貧の生活のせめてもの一助に、とボランティアが長年行ってきた生活困窮者支援活動を無にするものです。ここにみられるのは、ボランティアを排除することによってホームレスの生活を奪うという構造であり、ホームレスの生存権・生活権を侵害するばかりでなく、行政の不足を補って真摯に活動しているボランティアに牙をむけたという点で著しく相当性を欠く行為です。
   本件では、抜き打ち的であったこともあいまって、貴庁の目的及び手段の不法性は著しく、当ネットワークは強く抗議するものです。
 (2) 憲法25条違反、生活保護法違反
 公園・駐車場・トイレに起居するホームレスの方々(以下「当事者ら」という。)は、その必死の努力により公園にテント等を建てたり、駐車場等の暗黙のルールを守って段ボールで寝床を使ったりするなどして、寝泊まりしていました。
 そして公園や駐車場では、それぞれ週に1度、支援団体による炊き出しが行われ、飢えをしのぐことができたのです。
 これは、憲法25条1項の保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の水準に満たないものであったとはいえ、超最低限の生活をする基盤を築いていたものというべきです。本件封鎖は、公権力の行使によって上記のような当事者らの生活基盤を奪おうとするものです。当事者らが維持していた上記のような生活が「健康で文化的な最低限度の生活」に満たないものであったとしても、その代替措置として提供される施策が、上記「健康で文化的な最低限度の生活」の水準を下回ることは許されません。そして、この上記「健康で文化的な最低限度の生活」の水準は、憲法25条の生存権の具体化である生活保護法により実際に保障される生活水準が基準となります。
 しかし、貴庁は、上記の水準を満たす代替策を当事者らに具体的に提示・誘導することなく、また、貴庁内の生活保護の部局とも連絡をとることもなく、本件封鎖に踏み切り、寝起きの場所を奪い、あるいは奪おうとしています。支援団体も排除され、以前のような形での炊き出しは困難になってしまいました。
 したがって、本件封鎖は、当事者らの生存権を侵害するものとして、生活保護法さらには憲法25条1項にも違反します。
(3) 憲法13条、22条1項違反
 本件封鎖は、困窮等様々な事情により他に居住する場所を有しなかった当事者らが寝起きする場所から、当事者らを一方的、強制的に排除しようとするものです。
 そして、公園・駐車場・トイレは、ただ単に寝起きする場所というだけでなく、ここを拠点にして当事者らは生業に就き、社会に貢献し、コミュニティを形成していました。つまり、公園・駐車場・トイレは当事者らの人格的生存の基盤だったのです。

 したがって、本件封鎖は、憲法22条1項が保障する当事者らの居住・移動の自由及び憲法13条が保障する幸福追求権を侵害するものとして違憲です。
  (4) ホームレス自立支援法11条違反、社会権規約11条違反
2002年8月に成立したホームレスの自立の支援等に関する特別措置法11条は、公共施設の管理者は、「当該施設をホームレスが起居の場所とすることにより適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする」と定めています。
そして、同法制定にあたっての衆議院厚生労働委員会の付帯決議は、上記11条の「必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に十分に配慮すること」としています。
 ここにいう「国際約束」とは、国際人権規約・社会権規約11条が定める強制立ち退きの禁止(占有の法的保障)を意味しています。すなわち、わが国は、1979年に国際人権規約を批准しましたが、「適切な居住の権利」を保障する同社会権規約11条1項は、その内実として、①当事者、関係者との実効的で十分な協議及び交渉(適正手続の保障)と、②適切かつ十分な代替措置を講じること(住居の提供等)なく強制的に立ち退かされないことを権利として保障しているもの(占有の法的保障、強制立ち退きの禁止)と解されているのです(社会権規約に関する「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」の一般的意見第7、1997年)。
  
したがって、貴庁が行っている当事者らの締め出しは、そこに起居するホームレスの人々を強制的に排除するものであり、その前提として、当事者ら及びその支援者らと十分に話し合いを行い、敷金支給によって居宅を確保した上での居宅保護の開始(生活保護法30条、2003年7月31日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知「ホームレスに対する生活保護の適用について」、同日付厚生労働省社会・援護局長通知「『生活保護法による保護の実施要領について』の一部改正について」)をはじめとする適切な代替措置を講じなければなりません。

  本件の場合、貴庁は、当事者らや支援団体と話合いをするチャネルもあり、公園・駐車場・トイレで寝起きすること等を長期間黙認してきたという経緯もあるのですから、立ち退きを求める前に、事前に真摯な協議をして、生活保護法等による代替措置に誘導するべきでした。
  しかし、貴庁は、当事者らに対し、十分な話し合いも適切な代替措置も講じることなく、強制排除を行おうとしています。
    したがって、本件排除は、ホームレス自立支援法11条及び社会権規約11条に違反し、違法であることは明らかです。
  (5) 自由権規約17条違反
    市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「自由権規約」という。)17項は、住居につき恣意的又は不法に干渉されない旨規定しています。自由権規約委員会が採択した一般的意見によれば、ここにいう「住居」とは、人の住んでいる場所又は日常の職業を行っている場所を示すと解されており、除却命令の対象となるものと思われるテント等はこの「住居」に該当します。駐車場・トイレも毎晩寝起きの場所に使われていたのですから、やはり「住居」に該当します。
    当事者らの居住権の保護を無視して行われた本件封鎖及び除却命令の発令へ向けた準備は、当事者らの「住居」に対する「不法な干渉又は攻撃」ですから、自由権規約17条に違反し、違法です。
  (6) 民事保全・執行法上の手続履践の必要性、都市公園法違反
    貴庁が公園において今回発令しようとしている除却命令の真の目的は、本件テント等の除去ではなく、公園の明渡し、すなわち「与える債務」の強制的実現であり、「為す債務」のそれではありません。
    したがって、貴庁が上記の目的(公園の明渡し)を実現するためには、民事訴訟(またはそれを前提とした民事保全)に基づく直接強制によらなければなりません。直接強制が可能である以上、公園内の本件テント等の撤去という明渡しの一部分のみを取り上げて行政代執行という手法によって公園の明渡しという目的を実現することは許されないのです。
 この点に関し、政府は、国連の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解(2001年9月24日)」の以下の懸念
30.委員会は、強制立ち退き、とりわけ仮の住まいからのホームレスの強制立ち退き、及びウトロ地区において長い間住居を占有してきた人々の強制立ち退きに懸念を有する。この点に関し、委員会は、特に、仮処分命令発令手続においては、仮の立ち退き命令が、何ら理由を付すことなく、執行停止に服することもなく、発令されることとされており、このため、一般的性格を有する意見4及び7に確立された委員会のガイドラインに反して、あらゆる不服申し立ての権利は無意味なものとなり、事実上、仮の立ち退き命令が恒久的なものとなっていることから、このような略式の手続について懸念を有する。
に対して、2009年12月の「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条及び第17条に基づく第3回報告」において、
(パラグラフ57)民事保全法における仮処分命令手続においては、命令にはその理由を付さなければならないとされている(民事保全法第16条)。また、債務者に対して立退きを命ずるような仮処分命令は、債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに限り、原則として口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経た上で、発することができるものとされている(同法第23条第2項、第4項)。債務者は、仮処分命令に不服があれば、保全異議を裁判所に申し立てることができる(同法第26条)。裁判所は、この申立てに対して決定を行い、仮処分命令を取り消すときは、債務者の申立てにより、債権者に対し、原状回復を命ずることができる(同法第32条第1項、第33条)。債務者は、保全異議の申立てに対する裁判所の決定に不服があれば、保全抗告を裁判所に申し立てることができる(同法第41条第1項)。また、裁判所は、これらの債務者の保全異議や保全抗告の申立てに対する決定を行うまでの間、仮処分命令の執行停止を命ずることができる(同法第27条、第41条第4項)。さらに、仮処分命令は暫定的なものであり、最終的にはより厳格な手続である本案訴訟において、立退きの当否が裁判所によって判断されることになる。仮に、債権者が本案訴訟を提起しない場合には、裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出することを命じなければならず、債権者が同書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない(同法第37条第1項、第3項)。したがって、最終見解は、前提である法制度について、事実を誤認しているものである。 日本における仮処分命令発令手続を含む立退き命令については、一般的な性格を有する意見4及び7において委員会が明示したガイドラインに反するところはない。
と説明しています。上記の説明において、政府は、起居するホームレス(人間)を排除する場合に民事保全法の仮処分(ひいては民事執行法による本執行)の手続きを必要とすることを前提にしています。(上記の説明は、民事保全法の仮処分についてガイドラインの要件に沿った説明をした上で、仮処分を含む立退命令は委員会のガイドラインに反しないので問題ないとするものですから、人の排除に仮処分の手続きを必要とすることを前提としていることは明らかです。)
 都市公園法6条も、「占有」ではなく、わざわざ「占用」との文言を用いています。人の「占有」は6条の問題ではありません。人の「占有」を排除するために、6条違反に対処するための都市公園法上の措置を講ずることはできません。
 したがって、公園のホームレスの方々を排除する目的のために、都市公園法27条1項1号に基づく除却命令を発することは許されません。
 たとえ、著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要とする場合であっても、手続きの遺漏は許されないことを付言します。
 なお、貴庁は、公園における除却命令についての弁明の機会の付与の手続において、当初、名宛人となるべき者は公園内に起居していたのですから所在が判明しないことはなかったにもかかわらず、行政手続法15条1項の通知を区役所の掲示場に掲示する方法により行い、通知書を公園内のホームレスの方々に直接手渡しませんでした。そして、貴庁は、支援団体等から批判を受け、後日ようやく公園内のホームレスの方々に通知書を手渡すに至っており、行政手続法に従った適正な手続を真摯に履践する姿勢でないことは明白です。
 以上のとおり、今回予定されている都市公園法27条1項1号に基づく除却命令及びこれを強制するための行政代執行の手続きによっては、公園からホームレスの方々を排除することはできません。

 7 以上の通り、貴庁が行っている本件封鎖及びホームレスの排除は、憲法に違反するとともに、上記法律及び国際人権規約に照らし違法な行為です。
   よって、当ネットワークは同行為に抗議すると共に、直ちに同行為を中止し、当事者及びその支援者らと十分に話し合いを行い、生活保護法に従った居宅保護の開始をすすめるよう、強く要請するものです。

以上

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